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【古の記憶】-act7-

2008.03.25
【古の記憶】-act7-



「おや。老師様、その子供は?」

庵に入ると、中には客らしき男が居た。
思わず警戒し、老人の後ろへと隠れる竜を、老人はさも可笑しそうにホッホと笑い、長い髭を撫でながら一瞥する。



「わしの孫での。名は・・・ミストと言う。」

───ミスト?首を傾げる竜の背を、老人は軽く押すようにして男の前へと導いた。

「ほれ。挨拶をせんか。」

ミストと呼ばれた幼い竜は、表情の無い、けれども何処か困惑の色を浮かべ、老人を見上げる。
深いしわに刻まれた優しい目が、見下ろしていた。

男に視線を移すと、男の顔も優しげな笑みを湛えている。
おずおずと、竜は老人に習ったままに、頭を軽く下げた。

「───コンニチハ。」

「へぇ!ガーラ老師にこんな可愛い孫がねぇ!おぅ、ミスト坊、宜しくな。オレぁゼンってんだ。」

男はその大きな手で、竜の頭をわしわしとなでた。
思わずびくりと身を竦ませる竜に、人見知りかよ、と大きな声で笑って。

───不思議だった。

人の姿に化けただけで、こうも親しげになる、ヒトという生き物が。

暫く老人と楽しげに会話を交わし、ゼンと名乗った男は、じゃあな、と山を降りていく。

「───どうじゃ?人とは不可解な生き物じゃろ。
人は主に異形を恐れる。自分たちと姿形、僅かでも違えば畏怖し、迫害する。そういった生き物じゃ。
その中で異形なる者が生きるには、異形と思われぬ姿形を取る以外、己を守る術は無い。
特に、おぬしの様な幼き者はの。」

「───ミスト?」

「然様。そなたにも、生まれもっての名があろう。されどそれは決して漏らしてはならん。
その名は、そなたがいつか伴侶を得たとき、与えるべきもの。そなたがその命掛けて、信頼できると思った者のみに与える名故の。
じゃが呼び名が無ければ後々困る事もある。
今日からそなたの名は、「ミスト」じゃ。
『大気と共にある者』、mist=el=erva、その名をそなたに与えよう。わしの名は、ガーラ。ガーラ老師と、そう呼ぶがええ。」

じっと老人を見つめていた幼き竜───ミスト、は。
ゆっくり1つ、頷いた。

この日より、竜はミストの名を名乗り、人の姿で過ごす事となる。


to be continued・・・・・


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