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【古の記憶】-act4-

2008.03.22
【古の記憶】-act4-

思いの他、この幼い竜は人の言葉を理解するのが早かった。
それは老人の言葉に興味を持ったせいでもあるだろう。
片言ではあるものの、すでに会話も可能となり、霧になる術、人に変化する術を、老人は楽しげに教え込んだ。



2ヶ月もする頃には、もとよりその性質の為か 霧になる術は直ぐに身に着けた。
が、変化となると容易くはないようで、幼い竜は困惑顔で腹を抱えて笑い転げる老人を、きょとんとした目で眺める。

幼い竜のその手足は竜のそれで、顔も竜のまま。
首も長く、体のみを人の子供のそれに変えた姿は、何処か滑稽で、老人はさも可笑しそうに笑う。

「ほれ、顔はどうした。手は。足は。」

ペシ、ペシ、ペシ、と老人が手に持った杖で、軽く幼い竜の顔や手足を打つ。
体は何となく判るけれど、末端部分の記憶はほとんどなく、竜はほとほと困ってしまった。

「仕方がないの。ならば里に下りてみるが良い。里の童子を見て、その手足、顔、記憶するが良い。じゃが、くれぐれも食おうなどと思ってはならん。姿を現すことも然りじゃ。霧のまま、そっと覗いてみてくるが良い。終わったら戻ってくるのじゃぞ?」

─────里へ?
幼い竜は困惑した。記憶にあるのは、恐ろしい怒声と痛いモノ。
けれど、老人の笑みに後押しされるように。
竜はゆっくり頷いた。サラリと体が霧散する。

ゆらゆらと揺れる様に漂う霧は、そのまま小屋を抜け出して、里の方へとのろのろと降りていく。
老人は目を細め、それを見送った。

「─────さて。本能に任せ、人を襲うとなれば、わしも庇い立ては出来んじゃろうて。くれぐれも禁を犯す出ないぞ・・・。」

老人の声は小さな呟きのみで、竜に届くことは無かった。


to be continued・・・・・


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