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【古の記憶】-act3-

2008.03.21
【古の記憶】-act3-


「お前さんはどうやら霧の竜のようじゃの。」

分厚い本を抱え、いつもの様に老人が納屋へと足を踏み入れてきた。
目を閉じ、うつらうつらとしていた幼い竜は、軽く首を上げると、こてりと首を傾け、甘えるようにクゥンと鳴いた。
時は過ぎ、1ヶ月程経った頃の事。

少しずつ、老人の話す言葉に耳を欹てていた竜は、彼の言葉を理解し始めていた。


じっと蒼い瞳で、老人を眺める。
老人は何処か楽しげに、ホッホと笑い声を漏らすと、長い顎鬚を撫でつつ、本のページを捲った。
そこに綴られていた文字は理解出来なかったが、描かれた挿絵は自分に良く似ているのは、何となく判る。

「随分と便利な能力じゃの。霧とは即ち形を持たぬもの。
己の種族という概念で自然とその姿を取っている、言わば仮初の姿に過ぎんわけじゃ。
・・・とはいえ、それはそなたに限らず万物すべてに言える事でもあるがの。
うけつぐ螺旋に組み込まれた記憶がそう象るよう命じておる訳じゃ。
さりとて通常は決められた姿形を持ち、それを変化させるのはあまり容易ではない。
人然り、家畜しかり。中にはお前さんの様に元となる姿を持ち、なおかつそれを変化させ、
見た目もその属性すらも変化させる能力を持つものもいる。
それを如何に上手く使いこなせるかで、個々の生存率に差が現れる訳じゃの。」

老人は、通じているのか通じていないのか判らない相手に、とつとつと語り始めた。
体が大きく育てば、ここにいることは出来ないという事。
人里に下りれば、危険が付きまとうこと。
身を守るために覚えるべきこと。

「さて。人の中にあり人と共にある為には、どの様な姿を取るのが有効か判るかの?」

老人は目を細めると、竜の瞳を覗き込んだ。
じっと老人を見つめていた竜は、小さく首を傾けると、鼻先で老人をつついてみる。

老人は満足そうに目を細めた。

「ふむ。正解じゃ。つまりは擬態じゃな。
お前さんはまだ幼い。この先、それを身に着けねば、容易く人に狩られ命を落とすじゃろう。
本来ならお前さんくらいの幼獣は、親よりその術を習うものじゃが、見たところ はぐれたか 狩られたか。
どれ、老いぼれの気まぐれに、わしが伝授してみようかの?」



─────詰まるところ、老人も退屈をしていたらしい。
それはまるで動物に芸を教え込むような感覚で。
老人はこの竜に、色々と教え込むことにしたようだった。



to be continued・・・・・


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