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【古の記憶】 -act 2-
2008.03.20
【古の記憶】 -act 2-
─────痛いモノ。嫌。
竜は納屋の奥のガラクタの中に身を寄せると、顔をしかめた。
まだ幼く柔らかな鱗に、幾つもの亀裂が入り、翼には何本もの矢が、その薄い膜を突き破り、僅かでも動かせば激痛が走る。
ただ、恐ろしくて仕方が無かった。
震える竜の耳に、先ほどの怒鳴り声が聞こえてくる。
気づかれたのだろうか?
近づいてくる足音に、身を固めた。
ところが、どういうわけか罵声の主は踏み込んでこない。暫くすると、足音は遠ざかっていく。
小さく安堵の息を漏らすのもつかの間、1つの足音が納屋の中へと踏み込んできた。
視線を凝らしながら、低く唸る。
足音の主は、まるで枯れ枝を思わせる老人だった。
長い白銀の髭と髪を持ち、ゆったりと柔らかそうな服を纏った老人は、なにやら笑みを浮かべ、声を掛けてくる。
無論、言葉など通じなかった。
威嚇しているにも関わらず、老人はひょぃひょぃと近づいてきて、竜の頭をなでる。
噛み付こうとしたが、老人とは思えない、するりとした動きで、あっさりとかわされてしまった。
敵ではないという意思表示だろうか。
老人は、竜に声をかけ、頭を撫でる。
その度に噛み付こうと試みる牙も、引き裂かんとする爪も、するすると避けて。
食べるところなど何処にも無さそうな、不味そうな老人。
程なく竜は、抵抗を止め、大人しくその手を受け入れることにした。
竜が抵抗をやめると、老人は、痛む鱗や『痛いもの』─────矢に触れてくる。
流石にまた抵抗することとなったが、牙も爪も空を切るばかり。
1つ、2つ。矢が抜かれていく。
その度に激痛が走り、竜は悲鳴を上げ、やがて抵抗する余力もなくなった頃。
竜の意識は、深く沈んでいった。
─────目が覚めると、なにやら体中に妙な匂いと白い布が巻かれていた。不思議な事に、どんなに身をよじっても、爪で取ろうとしても、白い布は裂けることも外すことも出来ない。
老人の姿は無かった。
竜はつらつらと思いを馳せた。
ほんの数時間前。初めて見た広い空。
初めての風を受ける感覚。
目がくらむような光。
白く漂う雲。
柔らかな肉。紅玉色の甘くみずみずしい汁。けたたましい声。
恐ろしい形相の『餌』。
どす黒い憎悪に満ちた気と、怒鳴り声。
痛い痛いモノ。
撫でる、枯れ枝のような、でも、暖かな手。
しわがれた落ち着く声。
瞬き程度のわずかな時間に、目まぐるしく変化する周囲。まだ、状況が良く理解できずにいた。
やがて、近づいてくる足音に、びくりと身をすくませると、低く唸る。
また、あの老人だった。
老人の手には大きな布に包まれた何か。
相変わらずの笑みを湛えた顔で、ひょぃひょぃと近づいてくる。
竜はあきらめたように唸るのをやめた。
─────その日から毎日、老人は傷の手当をし、時折、白い布に包まれた『餌』を運んできた。傷の手当をする間。竜が食事をする間。老人は常に竜に声をかけ、体や頭をなでる。
時折、老人以外の者が納屋の傍を通り、時には納屋に足を踏み入れてきたが、何故か彼らの目には、竜の姿は見えないようだった。
傷が癒えても、竜はその納屋から動く事は無く、いつの間にか、竜はその老人がやってくるのを楽しみにするようになっていた。
to be continued・・・・・
ご協力お願いします♪
─────痛いモノ。嫌。
竜は納屋の奥のガラクタの中に身を寄せると、顔をしかめた。
まだ幼く柔らかな鱗に、幾つもの亀裂が入り、翼には何本もの矢が、その薄い膜を突き破り、僅かでも動かせば激痛が走る。
ただ、恐ろしくて仕方が無かった。
震える竜の耳に、先ほどの怒鳴り声が聞こえてくる。
気づかれたのだろうか?
近づいてくる足音に、身を固めた。
ところが、どういうわけか罵声の主は踏み込んでこない。暫くすると、足音は遠ざかっていく。
小さく安堵の息を漏らすのもつかの間、1つの足音が納屋の中へと踏み込んできた。
視線を凝らしながら、低く唸る。
足音の主は、まるで枯れ枝を思わせる老人だった。
長い白銀の髭と髪を持ち、ゆったりと柔らかそうな服を纏った老人は、なにやら笑みを浮かべ、声を掛けてくる。
無論、言葉など通じなかった。
威嚇しているにも関わらず、老人はひょぃひょぃと近づいてきて、竜の頭をなでる。
噛み付こうとしたが、老人とは思えない、するりとした動きで、あっさりとかわされてしまった。
敵ではないという意思表示だろうか。
老人は、竜に声をかけ、頭を撫でる。
その度に噛み付こうと試みる牙も、引き裂かんとする爪も、するすると避けて。
食べるところなど何処にも無さそうな、不味そうな老人。
程なく竜は、抵抗を止め、大人しくその手を受け入れることにした。
竜が抵抗をやめると、老人は、痛む鱗や『痛いもの』─────矢に触れてくる。
流石にまた抵抗することとなったが、牙も爪も空を切るばかり。
1つ、2つ。矢が抜かれていく。
その度に激痛が走り、竜は悲鳴を上げ、やがて抵抗する余力もなくなった頃。
竜の意識は、深く沈んでいった。
─────目が覚めると、なにやら体中に妙な匂いと白い布が巻かれていた。不思議な事に、どんなに身をよじっても、爪で取ろうとしても、白い布は裂けることも外すことも出来ない。
老人の姿は無かった。
竜はつらつらと思いを馳せた。
ほんの数時間前。初めて見た広い空。
初めての風を受ける感覚。
目がくらむような光。
白く漂う雲。
柔らかな肉。紅玉色の甘くみずみずしい汁。けたたましい声。
恐ろしい形相の『餌』。
どす黒い憎悪に満ちた気と、怒鳴り声。
痛い痛いモノ。
撫でる、枯れ枝のような、でも、暖かな手。
しわがれた落ち着く声。
瞬き程度のわずかな時間に、目まぐるしく変化する周囲。まだ、状況が良く理解できずにいた。
やがて、近づいてくる足音に、びくりと身をすくませると、低く唸る。
また、あの老人だった。
老人の手には大きな布に包まれた何か。
相変わらずの笑みを湛えた顔で、ひょぃひょぃと近づいてくる。
竜はあきらめたように唸るのをやめた。
─────その日から毎日、老人は傷の手当をし、時折、白い布に包まれた『餌』を運んできた。傷の手当をする間。竜が食事をする間。老人は常に竜に声をかけ、体や頭をなでる。
時折、老人以外の者が納屋の傍を通り、時には納屋に足を踏み入れてきたが、何故か彼らの目には、竜の姿は見えないようだった。
傷が癒えても、竜はその納屋から動く事は無く、いつの間にか、竜はその老人がやってくるのを楽しみにするようになっていた。
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ご協力お願いします♪
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Comment
No title
こんばんは!
ブログランキングから来ました。
竜の視点から描かれているのが新鮮なのと、言葉の選び方が丁寧なところに惹かれました。
また読みに来ます。
ではでは。
ブログランキングから来ました。
竜の視点から描かれているのが新鮮なのと、言葉の選び方が丁寧なところに惹かれました。
また読みに来ます。
ではでは。
No title
いき♂様、いらっしゃいませーww
つたない文章ですが、そういっていただけると励みになりますww
ありがとうございますーww
こちらからも、遊びにいかせていただきますね♪
つたない文章ですが、そういっていただけると励みになりますww
ありがとうございますーww
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