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【古の記憶】

2008.03.19
  

─────鏡を覗くと、同じ顔の自分が自分を見つめる。

─────同じ動きをして。同じ表情を作る。

─────でも、それは映っているわけではなく。

─────存在している。『そこ』に。

─────鏡の向こうの自分も、自分と同じように。



─────『そこ』から、『こちら』を、見ているんだ─────









【古の記憶】-act1-







───大勢の怒鳴り声。
───追ってくる松明の明かり。
───放たれる無数の矢。
─────そして、鮮血。激痛。



酷く飢えていた。
故に迷い込んだ、人の集落。
見つけたのは、甲高い声を上げる童子の姿。
とても可愛らしくて。
とても柔らかそうで。
とても─────
とても、美味そうだった。

じゃれ付く様に飛び掛ると、童子は驚いた様に目を見開いて、悲鳴を上げ、簡単に地面へと転がる。
赤い物が飛び散って爪を流れた。
紅玉色の液体は 甘い香りを放ち、爪に食い込む肉は、この上なく柔らかだった。

童子の口から漏れる絶叫が 周囲に響き渡り、幼い竜は 不服そうに喉を鳴らす。
これは、嫌い。喧しい。嫌な、音。だから、とめなくちゃ。
童子の首を噛むと、童子はくたりとして動かなくなった。
口の中に流れ込む液体は、とても甘く、この上ない芳香を放ち、暖かかった。

空腹を満たすそれに酔いしれる幼竜の背後で、今度は男の悲鳴が上がる。
大声で何かをわめき散らす。

─────ウルサイ。

せっかくの食事を邪魔されて、竜は不機嫌だった。
威嚇するように唸る。

─────ウルサイの。あっちに行って。

翼をはためかせ、頭を下げて。牙を剥いて。唸る。
1つ、また1つ。煩い声は増えていき、恐ろしい形相でこちらに近づいてくる。
それは、初めて知る恐怖で、幼い竜は思わず怯むと逃げ出した。

背後の声が一段と大きくなる。
体の脇を何かが飛ぶ。かすった所が痛い。
兎に角、恐ろしかった。
次々と自分目掛け飛んでくる『痛いもの』。

怒気を含んだ怒鳴り声。憎悪に満ちた気。
逃げて、逃げて、逃げて、逃げて─────

やがて、幼い竜は、遠くに見えた古びた小屋の納屋へと、飛び込んだ。



to be continued・・・・・

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