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【古の記憶】-act50-

2008.06.19
【古の記憶】-act50-


───宿屋での反応は、呆れるほどに拍子抜けするものだった。
怯えるどころか、怪我をしたらどうすると説教をしてくる者。
そうか、とだけ口にして、普段と全く変わらない者。
今度やりあわないかと、楽しそうに声を掛けてくる者。

何一つ、変わらなかった。

良いのか?これで。
何処までお人よしなんだ。此処の連中は。
もしも、自分がこの場所を襲ったら、どうするつもりなんだ?

その問いに、数名の者があっけらかんと答える。

「お前はそういうやつじゃないだろう?」
「その時は全力でとめてやるよ」

───おめでたくて、涙が出そうになる。
妙な感覚が湧き上がった。
竜としての本能の部分、七剣豪において二つ名とした『蒼霧』と呼ばれる悪鬼の心は 止めようが無かったが、それでも、此処の連中を信じたいと そう思う気持ちが芽生えている。
隠れ蓑にするつもりだった、元は利用するつもりだった連中への情にほだされたのは自分の方だ。
ミイラ取りがミイラになった、と言うことか。


───変わらずに居てくれた連中を、『仲間』だと認識したのは、これが初めての事だろう。
その気持ちに、答えたくなっている。

居ても良いんだろうか?僕は。
この場所に。
例え人を食らうバケモノでも、この手が血に染まっていても。
それでも、仲間と呼んでくれるのか。


心の中で、氷が溶ける、そんな感覚を覚える。
自らを覆っていた殻が、パラパラと崩れるようだった。




「・・・そう。アリガトウ。」

口をついたのは、そんな礼の言葉。
ふわりと笑みが零れる。



この日を境に、ミストから、わずかばかりの感情が、表へと出るようになった。
それは、彼女が心を開き始めた瞬間だったのかもしれない。


to be continued・・・・・

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タグ : ファンタジー 小説

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