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【古の記憶】-act39-

2008.05.13
【古の記憶】-act39-


───コト。
暖かな湯気の立つ葡萄酒の椀が出される。
アシェスナーダは、ほっと息を吐くと、姉の顔へと視線を向けた。

いつも通っていた姉の部屋の中で、二人は向かい合って腰を降ろしている。

「───貴女は、ずっと世界を創りたがっていたものね。」

ポツリ。姉の言葉がテーブルに落ちる。
酷くやつれた様子に、ツクリと心が痛む。

「───ごめんなさい。姉様。・・・ノユーエル姉様は、やっぱり・・・?」

「・・・ええ。自らの作った世界へと堕されたわ。
きっとあの子も長くは存在できないでしょう・・・。」

「・・・そうね。ノユーエル姉様は好きではなかったけれど・・・。
やっぱり、悲しいわ。」

「アシェスナーダ。貴女には辛いことだと思うわ。
けれど、あの世界は諦めなさい?
お父様に逆らえば、いくら貴女とはいえ、今度こそ許してはいただけないわ。」

「判っているわ。」

静かな、凛とした声に、姉ははっと息を呑んだ。
どちらとも取れるその答え。
1つは、諦めるとの同意。もう一つは、許してもらえなくても構わないの意。

「・・・そう。」

ため息と共に、ぽつりと相槌を打つ。
昔から、そうだった。この子は強い意思の力を持つ。
一度決めたら、決して後には引かない子だった。

「滅びの種には、唯一の希望が残されているわ。
もしも、その微かな希望の光が、滅びの種を変えたなら・・・。
あるいは、貴女の世界は滅びずに済むかもしれないわね。」

「希望の、ひかり・・・。」

噛み締めるように、アシェスナーダは復唱する。

「───ええ。」

ふんわりと、姉の顔にいつもの笑みが戻る。

「貴女の思うがままに、生きなさい。
私も貴女も、お父様に創られたお人形・・・。
それでも、貴女は貴女の意思を持ったのだから。
・・・私は何もしてはあげられないけれど。
───がんばりなさい。」

姉の冷たく細い指が髪に触れ、ゆるりと撫でた。
優しいその指は、何処か懐かしく、アシェスナーダの顔にも、笑みが戻る。

「うん。有難う。姉様。私、後悔はしないわ。どんなことになっても。」






暗い部屋の中。
父である『神』は、娘の生み出した宝石の様なそれを、静かに眺めていた。



やがて、落とした種が芽吹く。

芽吹いた種は、瞬く間に地表を凌駕し始める。

美しかった森も、海も、蝕んでいく。

世界は、───滅びに向かい歩き始めた。





 【 人 間 】 と い う名の、『滅びの種』によって──────



to be continued・・・・・


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Comment

ああ、なるほど。
それが、滅びの種だったのですね……

そーなんです^^;
ある意味逆視点?
人間の視点でなく、動物や自然の視点で考えてみた、みたいなー

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