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【古の記憶】-act38-

2008.05.12
【古の記憶】-act38-



靴音がやけに耳障りだ。冷たい、凍りつきそうな程の緊張の中、ナタシーアとアシェスナーダは、無言のまま歩を進める。
父の部屋に近づくにつれ、その足取りは酷く重たいものになり、まるで鉛の枷でも付いているかのようだと、まるで何処か他人事の様に、アシェスナーダは考えていた。

重厚な扉が音もなく開く。
深淵のような暗闇の中、無数の星が瞬くその部屋の奥、父の姿と、1つの混沌とした世界が浮かんでいた。


あれは、ノユーエルの世界だ。

漠然とした直感。
ノユーエルの姿はそこにはない。


「お父様。アシェスナーダです。」

扉の前で、深々と一礼をする。

「・・・呼ばれた理由は、判っているな?・・・末の娘よ。」

部屋と同じ、冷たく、低い声が響いた。
アシェスナーダは無言のまま、しっかりと頷いた。

「申し訳ありませんでした。」

良い訳はしない。しても無駄なことを、アシェスナーダは良く知っていた。
視線を、浮かぶ世界へと移す。
此処から見えるその世界は、よどんだ色をして、所々斑で、暗い瘴気の渦が取り巻いている。

───恐らく姉は───ノユーエルは、『そこ』に居るのだろう。
彼女は、きっと『堕とされた』のだ。その世界に。
ごくり、と喉が鳴った。

───次は、私の、番───

大きく息を吸い込み、呼吸を整えると、しっかりと父を見据える。

「───申し訳、ありませんでした。」

「末の娘よ。お前は罪を犯した。お前の作った世界は、あってはならない世界。判っているな?」

父の声に、青ざめた顔のまま、けれども、はっきりと。
アシェスナーダは頷いてみせる。
いよいよ、父からその処罰が下る。
瞼を落とすと、続く言葉を、噛み締めるように待った。

「───お前の世界に『滅びの種』を落とそう。
お前の世界は、生きながらに朽ちていくだろう。
アシェスナーダ。お前は禁を犯した。
お前は世界が滅ぶその日まで、全ての力を封じ、謹慎とする。
・・・お前の作る世界は、確かに美しい。
やがて良い創世者となるだろう。」

「───有難うございます。」

アシェスナーダは今一度深々と頭を下げる。
その表情は硬いままだ。


父の左手が、真横へと滑ると、彼の手の中には、あの眩い宝石の様な世界が浮き上がった。

父の指先から、『滅びの種』が落とされる。
それは、その世界において異質なもの。
暴虐なもの。
生物でありながら、確実にその『世界を蝕む者』。

激しく胸が痛む。

───私は。
私の手で、この世界に『目覚めの種』を植えた。
やがて『彼ら』も目覚めるだろう。
そうして、やってくるのは、『争い』だ。
この世界も混沌と化すだろう。
それでも。

もしも。
───もしも、私の『目覚めの種』が、『滅びの種』に勝れば。
父を下し、私はもう一度あの世界を手に入れる。


父は、まだ、この末の娘の反逆には、気づいては、いなかった。


to be continued・・・・・


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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

タグ : ファンタジー 小説

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Comment

それほどまでに強い決意が!
『目覚めの種』と『滅びの種』の争い。
どきどきします。

ですですw<強い決意

バトル勃発ですー(ぉ)
『目覚めの種』と『滅びの種』
この二つについては次回♪

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