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【古の記憶】-act30-

2008.04.29

【古の記憶】-act30-
-side mist-


その不思議な館に腰を据えてから、数日が経過していた。
眠る為のベッドは幾らでもあったし、寧ろ竜である彼女にとって、ふかふかのベッドもただの道楽の道具に過ぎない。
人の居ないこの世界では、身を隠す必要もなかった。
本を読みふけり、飽きたら空を自由に飛びまわり、疲れれば眠りについた。

幾つかの本を読み進めるうちに、ミストは奇妙な事に気がつく。
それは、その数多の文献の中に、彼女の生まれ育った世界の話や、地名が数多く登場していた事だ。
自分と同じように、あの世界から此処へ紛れ込んだものが書いた物だろうか?

脳裏に浮かんだのは、その館より北へ移動した場所に残された遺跡都市の事。
その残骸は、遥か昔、巨大な町がそこに存在していたことを示す。

確かその場所にも、1つだけ、此処ほどではないにしろ、形を保っていたものがあったはず。


ミストは手にした本をテーブルに置くと、窓から外へと身を躍らせた。

一拍の後、彼女の体は霧散し、上空に浮上すると、巨大な竜の姿を象る。
目指すのは、当然その、遺跡都市の残骸だった。





─────しぃん、と静まり返ったその都市の骸は、そこだけ時が止まっているかのようだった。
瓦礫を流れる風は、隙間を通り、低く、高く。まるで女の啜り泣きのように聞こえる。
足を踏み出せば、硬い石畳の名残が、冷たい音を立て、瓦礫に反射し、寒々しく響き渡った。

微かな振動ですら、崩れ落ちそうな程に風化したその場所を、ミストは静かに進む。
やがて、いつもは上空から眺めていた残骸の1つにたどり着いた。

思いの外大きい。
恐らく何かの施設だったようだ。
時を止めた時計台が、そのまま此方を見下ろしていた。

妙な感覚が占める。
いつか。どこかで。この景色を、自分は見たことがある気がする。

それが何処でだったのか、何時の事だったのか、あまりにも長く生きすぎた竜の娘には、思い出すことは出来なかった。
ただ、まるで喉に引っかかった魚の小骨の様に、記憶の隅に引っかかる。

───感覚を振り払うように、軽く頭を振ると、ミストはそのまま、その施設へと足を進めた。


─────カツン、と、低く、誰も居ない廃墟の群れに、その靴音だけを、残して。


to be continued・・・・・

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Comment

No title

こんばんは、初めまして。
お名前はいつもいきさん宅で拝見しております。

Twilight Mirageを1〜4と、
古の記憶1〜30一気読みしました。
ファンタジー大好きっ子の私には、どちらもツボにはまりました・・・っ!
信じて裏切られて・・・ミストのボロボロの心情を読むのが辛かったです><
ミストが足を踏み入れたもう一つの世界は、もっと色んな種族(というのかな?)がいるみたいですね。
続きが気になるのですが、明日も早いため、続きはまた後日;

当方もファンタジー小説(バトルばっかりですが;)を書いています。
とても拙いものですが(特に初めの方は;)・・・(汗
小説仲間様ということで、リンクしてもよろしいでしょうか?
ご検討宜しくお願いいたしますっ!

最後に、差し出がましくて申し訳ありませんが・・・。
>思いの他大きい。
>恐らく何かの施設だったようだ。
正しくは「思いの外」です。
お気を悪くしてしまいましたら、すみません。

また伺いますね。
長々とコメント、失礼いたしました。

No title

桜桃様>
おいでませ♪
コメント有難うございますーww
リンク、もちろん大歓迎ですっ
こちらからもリンク貼らせて頂きますね♪

ご指摘ありがとぅございますっ!
やー、オオボケが特技なもので誤字脱字が多くて;;
気を悪くなんてとんでもないですっ。
寧ろめっちゃありがたいです〜っ。

これからも何か気がついたらビシバシ突っ込んでやってください>ω<*

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