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【古の記憶】-act24-

2008.04.22

【古の記憶】-act24-
-side-mist-

女は、ファウリータァルと名乗った。
まるで隠す様子もなく、花茶を片手に にこにこと自分の素性を明かしていく。

白の眷属と呼ばれる、一族だと言うこと。
花を司る精霊の様なものであること。
眷属の中では、ラベンダーと呼ばれていること。

ミストの眉間の皺は深くなるばかりだ。
聞いてもいないことを、ほんわり、ほんわりと、まるで御伽噺でもしているかのように
平然と 笑みを浮かべ語るその女の考えは、掴みどころがまるでなく、困惑は深まるばかり。

「嫌な子ね。
此方がこれほど身のうちを明かしているのに、何故そんな嫌そうな顔をするの?
私はあなたの敵ではないと、こんなに意思表示をしているのに。
悲しいわ?」

───どこがだ。
悲しむどころか、ころころと笑う女に、ミストは苦虫を噛み潰した様な顔のまま、渋々名を名乗り、
既に姿を見られていたこともあった為、自分が霧竜の眷属であること、気ままに一人旅をしていること等を、淡々と口にした。

そんなミストの様子を、女は静かな、まるで何もかも見通すかのような、紅玉色の透き通った目で見つめる。

「───何。」

流石に、その視線に居心地の悪さを感じたミストの言葉に、女───ファゥリータァルは、半ば覗き込むように、顔を寄せた。

「私は全部話したのに。冷たいわ。それに、私の眷属は、知りたがりなの。
偽の名で呼ぶのは好きではないわ?ねぇ?イル──────」

「その名を呼ぶな!!!!」

女の声をさえぎる様に、ミストは鋭い声でそれを制した。
思わず体を起こした反動で、傷に触ったらしい。
痛みに一瞬呼吸が止まる。

蒼白なのは、痛みのせいばかりではない。
彼女が言いかけた「それ」は、紛れもなく、ミストの「真名」だったのだから。
自らを縛るものでもある、その名を知るものはいない筈。
なのに、出会ったばかりの女が、何故その名を知っている?
血が引いていく。心臓の音がやけに五月蝿い。

知られれば、言霊である「それ」は、己を呪縛し、女のなすがままになるだろう。
それ故に、名は伴侶にのみ預けるものが、常だ。
全く見ず知らずの女に、それを奪われたとなれば───


殺すしかない、か?

ギリ、とにらみつけたミストとは対象に、ファゥリータァルは 相変わらずのほほんとした笑みを向けてくる。
ミストの剣幕に、驚いた様子も見せず、にこにこと、ミストのカップにお替りの花茶を注ぎながら、悪びれた様子も無ければ、呪縛する様子も無い。

「そんなに嫌?仕方が無いわ。でも私、嘘の名は好きじゃないの。
そうね。じゃ、愛称にしておくわ?イル、と呼ばせてもらう事にしましょう。
───ああ、私も似たようなものなのよ?
『ラベンダー』というのが、本名になるわ。
私の身を現すの。 内緒よ?誰にも言わないで頂戴ね。
あら。・・・ひどいわ。
命の恩人だというのに、刃を向けようだなんて、無粋な真似はやめて頂戴。」


女のそののほほんとした声で、一気に気が抜ける。
困惑と、苛立ちと、虚脱と、痛みとで、ミストは、深く深くため息をついた。
彼女には全て、お見通しということなのだろう。

何を考えているんだ?

精神的にも肉体的にもぐったりのミストは、元の様に、少々乱暴気味に。
ベッドにまた、腰を戻した。



to be continued・・・・・


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タグ : ファンタジー 小説

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Comment

No title

うはー。謎めいた女性大好き(マテ
こういうミステリアスな雰囲気には惹き込まれます。
しかも「真名」を知っているとは。

No title

えへーwwありがとうございますっww(テレテレ*)
個人的にも、ファゥはけっこう気に入ってたりしてw
今でこそ、ミストもミラーも、真名をホイホイ教えてしまってるんですが(ぇ?)この当時は、絶対知られないようにーってしてたんですよねーw

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