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【古の記憶】-act21-

2008.04.17

【古の記憶】-act21-
-side-mist-

それは、長く続く街道が延びた、辺鄙な場所での出来事だった。
左右には広い草原と、その向こうに広がる広大な森。
遥か前方には、白い雪を抱いた山脈が美しく伸びている。

そんな中を一人、ぶらりと一人旅をしていたミストに
気の緩みがあっても、何ら不思議な事ではなかった。

あたりに人影はない。
次の町までは、まだ数日の距離を要し、背にした町からは、すでに丸1日が経過している。
竜の姿でなら、数刻で次の町までいけるはずだ。

代わり映えのしない景色に、そろそろあき始めていたミストは、今一度周囲を見渡した。


────大丈夫。問題はない。

歩き通しだった足を止めると、そのまま脇の草原へと向きを変える。
生い茂った草を踏み、街道から距離を取ると、その場で足を止めた。

ググ、と背が盛り上がる。
足元から湧き出すのは、白い霧。
渦巻くそれは、小さな竜巻のように、少年にも見えるその姿を隠した。
広がる霧が、一気に霧散すると、その霧の中から現れたのは
美しい、硝子の様な鱗を持つ、1匹の竜の姿。

竜は数度翼を大きく打つと、高く空へ飛翔していく。

一杯に伸ばす翼も、風を切る感触も、眼下に広がるその景色も
まるで初めて空を舞った時のように爽快だった。

翼を1打ちするだけで、グンっと速度が上がっていく。
人の姿では、後3日は掛かったであろう距離さえも、
夕暮れが近づく頃には、すでに後僅かの距離にまで近づいていた。


───この辺で良いだろう。

竜はゆっくりと下降を始める。
が。

聊か近づきすぎたと感じた時には、
その町の見張り台から、チカ、っとした明かりが瞬き、
刹那、煌きは風を切る唸りを上げ、小さな点であったそれは己に向かいまっすぐに飛んできた。


────身を貫く、焼け付くような痛みが全身を駆け巡り、
何が何だかわからなくなった。
慌てて翼を打つも、それは激しい痛みを伴い、意識をもぎ取るには十分すぎる。
流れ落ちる何かの感覚に、己の失態に気づきはしたが
それも最早、手遅れだろう。



力の抜けたその体は、大地の呼ぶ引力の力に
まるで吸い寄せられるかのように。

────地面へと、落ちていった。


to be continued・・・・・


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