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【古の記憶】-act17-

2008.04.08

【古の記憶】-act17-



-side-mist-



サァ・・・と頬をなでる風が変わる。
見上げたその空に、あの赤い火の玉は無かった。

『異世界』。

ふとそんな言葉が頭をよぎる。

少女の躯を、一度抱えなおし。
ミストはゆるりと歩き出した。


どれくらい進んだだろう。
ふと煙る霧の向こうに、古い、朽ちた洋館を見つけた。

痛んだ金属の柵を開け、中へと踏み込んでみる。
そこは、誰かの屋敷の様だった。
広くがらんとしたエントランスホールに、奇妙な機械。
薄暗く、蜘蛛の巣が垂れ下がり、埃だらけのそこは、以外にも汚れを除いては、壁も床も朽ちてはいなかった。

ミストはゆるりと少女を抱いたまま、屋敷の中を見て回った。
無限のループを描く客間。大きな浴場。膨大な本の並ぶ書庫。
外に出れば、懇々と水の沸く噴水のある裏庭と、広い空き地があった。

ふわりと薄紅の花びらが舞う。
見上げれば、桜が風に揺れていた。

ミストは微笑を浮かべると、そのうちの一番小さな桜の根元に少女を埋める。

「見据えて見ようじゃない。ねえ、リト。」

眠るような少女の頬を、軽くなでると、土を被せる。
暫く。
此処を拠点としてみるか。

己の世界は滅びてしまった。
ならば。

まずは、この世界を見て回ろう。
立ち上がったミストの頬を、やさしく穏やかな風が、なでていった。




-side-mirror-




伸ばした足が、その空間に踏み入れる刹那。

激しい衝撃が体を貫いた。

抱きしめていた小さな少女の体が燃え上げる。

────ああ。そうか。間に合わなかったのか。



それも、良いだろうと思った。
ミストは、ゆっくり目を閉じる。
この、愚かな世界と共に。自分も無に還るのだ。

遠のく意識の中、そんな事を、考えていた。

────────
────
──


ふと、目を開ける。
異様にそこは、暗く、音も無く、上も下も無い。
見渡すと、いくつもの瓦礫が浮かび、漂っていた。

────何処だ?此処は。

ミストは眉を寄せる。
見渡す限りの闇の空間。
自らの手を眺めてみる。

確かにあの時、自分は砕け散ったはずだった。
此処は死の世界か?
自分は無になったのか?
なら、この意思は何?
何故、他の者がいない?

自らの服に。
焼け焦げた小さな服の破片がこびりついていた。

ぞくり、と肌があわ立つ。

森は?
野は?
山は?
川は?
泉は?
風は?

────ナ ニ モ ナ イ────

「ぁ・・・あぁぁーーーーーーーーーッ!!!」

頭を抑え、悲鳴を上げる。
何も無い、『無』の世界に。
悲鳴だけが、響いていった。



to be continued・・・・・


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