小説メニュー

【古の記憶】-act14-

2008.04.04

【古の記憶】-act14-


とろりと、時が流れる。
それはまるで、止まったかのような時。

しっとりと湿り気を帯びた洞窟の中は、ほんのわずかな光ゴケの明かりで薄いブルーに照らされている。
もうどれくらいの時をこうして来ただろう。
地底湖のほとりにゆったりと身を横たえ、竜はつらつらと思いをはせていた。

時折人の世界を覗きに行ったりもしたが彼・・、いや、彼女が普通でないと知ると、誰もが刃を向け、憎悪の意思を表した。
所詮人という生き物は、自分以上の力を持つものや異形の者は排除しようとする傾向にあるようだ。

愚かなことだ。

竜はその度に人という生き物に幻滅し、そしてこの地底湖のある洞窟へと身を寄せた。
それでも自分を殺そうとやってくるものは後を絶たない。実に鬱陶しい。
恐ろしいのなら、ほおって置けばよいものを・・・。
小さくつぶやいたその時だった。
おびえを含んだ気配が、こちらに近づいてくる。
やれやれ。またか。
おそらく自分を倒そうとやってきた冒険者の類だろう。そう思って目を開けた竜は少々拍子抜けをした。
そこにいたのは、年端もいかぬ小さな少女だったのだ。

少女は、竜の姿を見つけると、ヒッと小さな声を上げる。
迷い込んだのかとも思ったが、少女は震えながらも竜の傍へと寄ってくると、膝をついた。

「わた・・私は、リト、といいます。
神様の、お使いの、竜さんにお願いが・・・っ。」

震える小さな声は、酷く聞き取りにくい。
神の使い?
何を下らないことを。

『神ノ使イ? 笑止ダネ。 何故僕ガ ニンゲン如キ ノ 願イヲ 聞ク必要ガアル? 都合ノ良イ時ダケ、ソウシテ 媚ビテ見セル。 薄汚イ ニンゲン メ。マタ 騙ス ツモリダロウ。』

────また?
自分の言葉に首を傾げる。
馬鹿な。自分が人間如きに騙されるものか。

竜の言葉に、少女は額を地面へと擦り付けた。
遠目でも見て取れる程に震えている。
何度も、ごめんなさい、と繰り返して。
そうして彼女は顔を上げた。
大粒の涙が、頬を伝い、地面に落ちる。

──ああ。涙だけは、綺麗だ。

「でも・・・。このままじゃ、みんな死んでしまいます。木も草も、生き物すべて。」

彼女は、怯えながらも、話し始めた。

今、世界を巻き込んだ魔道戦争が勃発していること。
ある国が発動した隕石落下の術により巨大な隕石が地上に向かっていること。
その隕石は発動した魔術師達の予想を大きく上回る大きな物で、それが落ちてきたら、間違いなく世界はその爆風により消滅するだろうということ。

竜は大きくため息をついた。

本来なら、勝手に死ねと言いたい所だったが。
流石に世界の消滅は、己にとっても全く関係のない話とは言えず、そして。

────少しだけ。ほんの、少しだけ。
彼女のその涙を、信じてみたくなった。

ふわりと霧が舞い、竜の姿は霧に溶け、それは一つにまとまると、人の姿をとった。

歳の頃、15,6ほどの、蒼いローブに大きな帽子を纏った、少年の姿へと。

「君の涙を信じてみよう。僕の名はミスト。そう呼んでくれればいい。」

ゆっくりと抑揚のない声で竜・・・ミストが告げた。


to be continued・・・・・


next≫



ご協力お願いします♪

タグ : ファンタジー 小説

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

Comment

No title

続きがあって良かった♪
目次の見方になれてなくて、13までしかないと思っていたんです、すみません(^^;
妹のために龍を騙した青年のエピソードは切なかったです。
この先はどうなるのでしょうか。
今日はここまで拝読。
続けて読みたいけど、また日を改めて読みに伺います♪

No title

いき♂様、こんにちはーーw
ブロともありがとうございますっ♪
や、もぉ順位はやっぱりレベルの差?(ぁ

如何せん僕ってばよくばりさんなので、
どーもこぉ、おもちゃ箱ひっくりかえしたよぉな有様になっちゃぅんですよねぇ・・・。
実はサイトもこんな具合でごっちゃりしてます;;

古の記憶は、ほぼ毎日更新してますんでw
(暇人なんです(ぁ)

Comment form

チェックを入れると管理人以外は閲覧できません