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【古の記憶】-act12-
2008.04.01
【古の記憶】-act12-
キアと名乗った男は、竜を相手に色々な話をした。
貧しい村の出身で、出稼ぎの為に傭兵になったこと。
長く病に伏せている恋人。
彼女の病を癒すため、薬草を探して各地を巡っている事。
魔物に襲われ、逃げ込んだ先にこの洞窟があった事。
彼の傷は徐々に癒え、寒さをしのぐ為に、彼は竜の翼の下で眠る。
全く自分を恐れてはいないようだった。
初めは警戒を解かずにいた竜も、彼のこの人懐っこい性格と明るさに徐々に心を開き、数日すぎる頃には、竜も良く笑い、言葉を交わすようになっていた。
「ふぅ。どうやら傷ももういいみたいだな。」
まだ痛々しい傷跡の残る腹に指を這わせ、男は1つ頷いた。
「ヨカッタネ。キア。」
覗き込むようにして、竜が答える。
「ああ。折角だし、久しぶりに少し外の空気でも吸ってくるよ。ミスト。俺の荷物の番をしていてくれるか?」
竜が頷くと、男は悪いな、と声を添えて、洞窟を後にする。
────1時間。2時間。
男は中々戻ってはこなかった。
多少心配にはなったが、やがて、ウトウトとし始める。
一日の大半を寝てすごす竜には、すでに日課のようなもので、その眠りはすぐに深いものになった。
────チクリ。
小さな痛みに、竜は眠りから目覚める。
顔を上げると、男が戻ってきていた。
「───キア?」
声をかけると、男はビクリと跳ね上がり、飛びのくように下がった。
泣き笑いのような顔が、竜の瞳に映る。
「ごめん。ごめんな。ミスト・・・。」
訝しげに首を傾ける竜は、不意に感じた違和感に、もう一度男へと視線を落とした。
体から、力が抜けていく。
男の言葉が、さらに続いた。
「ごめんな。ソレイユを助けるには、薬がいるんだよ・・・。薬・・・竜の、肝が・・・!」
男の言葉を、理解することは出来なかった。
────否。否定したかった。
男の背後から、ワラワラと兵士らしい男達がなだれ込んでくるのを、竜は呆然と眺めていた。
もはや、瞼すら持ち上げるのも、難しい。
言葉を口にすることは出来なかった。
────何故・・・?
「友達、だよな?俺達・・・」
竜の疑問を、彼が口にする。
そう。自分も、そう思っていた。
初めて出来た、『友達』だと。
「友達だよな!親友だよな!だったら、ソレイユを助けてくれよ!お前の肝、俺にくれよ!俺達、親友だろ?!」
ガラガラと、音を立てて。
竜の中で、何かが崩れた。
────ああ。そうか。こいつも、薄汚いニンゲンだった────
男の悲鳴のような声が響く中、兵士と思しき男達は、次々と竜の手足に巨大な杭を打ち込み、網を張る。
激痛で悲鳴にならない声を上げる。
────夢であってほしかった。
痛みで意識が遠のく中、泣き崩れる男の姿が、僅かに視界の隅に、残って。
to be continued・・・・・
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