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【古の記憶】-act11-

2008.03.31

【古の記憶】-act11-



「・・・なー。」

不意に男が口を開いた。
男はシャツを脱ぐと、自分の腹にきつく巻きつけ、視線を竜へと向ける。

「水飲んでいいか?」

男の指す先には、美しい水を湛える地底湖がある。
竜は何もいわず、ただじっと男を見据えていた。

「まぁ、竜だもんな。口はきけねぇってか。よ・・。」

男は這いずるように湖に近づくと、襲うなよ?というように竜へ片手を突き出すようにして、湖に顔を突っ込み、がぶがぶと飲み始める。

「ふぅ。美味い。こんな洞窟の奥に、こんな良い水があるとはなぁ。所でお前、珍しい竜だな。水竜でもないし、風竜でもない。硝子竜か?はっは。そんなのきいたことねぇなぁ。」

先ほどに比べ、大分近づいたその距離。
男は退屈なのか、一人でベラベラとしゃべりだす。
不思議と不快感はなかった。

「どうせこの傷じゃすぐには動けそうもないんだよな。
なぁ、お前。俺を暫く此処に置いてくれよ。
ああ、間違っても食うなよ?俺は不味いぞ。
自分の肉を食ったことはないが、きっと不味い。
俺はキアと言うんだ。お前は────ああ、しゃべれないんだったな。良し、俺が名を考えてやろう。
・・・えぇと・・・。」

竜は、小さくため息を吐く。
それは、どこか笑みを含んで。

「ミスト。」

静かな声で、名を告げた。
男が驚いたように竜を見る。

「僕ノ名前ハ ミスト。霧ノ、竜。」

老人が死んでから、2000年ぶりに。
竜はまた、人と、僅かな時を過ごすことになった。


to be continued・・・・・


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